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害虫の特徴と防除

食品の害虫(2) シバンムシ

特 長

 シバンムシは死番虫と書き、英名のdeathwatchを直訳したものです。名前の由来は、約3300年前のエジプトのミイラと一緒にこの虫の死体が出てきたからだという説があります。一方、食材性のシバンムシの中には、孔道の中で音を出すものがおり、古くヨーロッパでは家の建材の中から聞こえる正体不明のこの音が「死を告げる予報」と言い伝えられたことによるという説もあります(安富・梅谷、1995)。
 シバンムシは、コウチュウ目シバンムシ科に属する昆虫で、世界で1000種以上が知られ、その多くが樹木を加害する種類です。食品害虫として問題となるのは、主にタバコシバンムシとジンサンシバンムシの2種類だけです。しかしこの2種類は、世界的に知られる食品の大害虫となっています。タバコシバンムシは葉タバコの害虫であること、ジンサンシバンムシは漢方薬の人参の害虫であることに名前が由来しています。これらは、いずれも体長2〜3mm程度の褐色の甲虫で、比較的よく飛翔し、照明などにも飛来します。
 シバンムシの幼虫はカブトムシの幼虫のような形態ですがとても小さく、餌の中にいてあまり動きません。小麦粉や米粉などの穀粉や乾燥麺類、ビスケット、菓子類などの加工食品、唐辛子や胡椒などの香辛料、乾燥果実や干し芋、乾物、漢方薬などを食害します。また食品や医療品などに迷入して混入異物となることも多い虫です。貯蔵葉タバコの大害虫であり、ドライフラワーも食害します。タバコの吸殻を溜めて放置していたり、油粕などの肥料、ペットフードなどを開封したまま放置していると、大量に発生して不快害虫となることもあります。
 タバコシバンムシは、畳のわら床から発生することもあり、その場合には長期間持続的に多数発生します。このため本種の幼虫の天敵であるシバンムシアリガタバチの寄生を受けやすく、二次的にこのハチによって起こされる刺咬被害は、さらに深刻なものとなります。近年ではコーリャンを原料とした合板からも発生して、同様な問題が起きています。

防 除

 食品害虫に共通して言えることですが、餌となりやすい穀粉、乾麺、乾燥食品などは密閉性の高い保管容器に入れて保管します。こぼれ落ちた食品屑や穀粉の粉溜まりは早めに掃除し、発生源を無くすることが基本となります。特に米びつの周辺に米粉やヌカなどが溜まっていると発生源になりやすいので、日頃からよく清掃しておきます。また、唐辛子などの調味料の外蓋を空けたままにしていると、ふりかけ穴から虫が侵入して中で幼虫が繁殖していることもあります。発生源となった食品などはすぐに廃棄し、同じ棚に置いてあった他の食品も加害されている可能性があるので、注意します。漢方薬からも発生します。ドライフラワーやマジパンでできた装飾品、剥製なども日頃から注意が必要です。捨てられないものに虫がついていたら、それをビニール袋で包み、その中に衣類害虫用の防虫剤を入れ、数ヶ月間は密封しておきます。
 タバコシバンムシのフェロモントラップは雄成虫に対して非常に捕獲率が高いので、室内に発生しているかどうかを知るのに適しています。また、いずれのシバンムシも光に誘引されるためライトトラップを設置すると成虫が捕獲されます。食品を扱う場所では、成虫の早期の捕獲は混入異物の防止にも有効です。ただし通常は、これだけで防除することはできません。
 成虫に対してはピレスロイド系の殺虫剤を噴霧すれば殺虫できます。虫が発生した食品にはエアゾールを吹きかけてただちに廃棄し、周辺を清掃します。被害が広がっている場合には、市販の燻煙剤や全量噴射式エアゾールを室内に充満させます。これらは溜まった粉の中にいる虫までは全滅させることはできませんので、よく清掃した後で使用すると効果的です。清掃によって発生源を除去することがやはり最も大切です。
 タバコシバンムシが、古くなった畳やコーリャンを原料とする合板などから発生した時には、室内を消毒した後に発生部材を新しいものと交換した方が良いようです。発生の規模が少ない場合には、発生部位にエアゾールを注入し(ピンノズルが好ましい)、その周囲の表面にも吹き付けます。さらに市販の燻煙剤または全量噴射型エアゾールを室内に充満させます。発生規模が大きい場合には、専門業者に相談して、畳の熱乾燥処理や建築部材の交換、場合によってはガス燻蒸を行います。