アリガタバチ類はハチ目、アリガタバチ科の寄生蜂で、外見がアリに似ているのでこのような名前が付きました。世界で500種以上が知られています。甲虫類の幼虫に寄生しますが、家屋内に発生した甲虫類に寄生して大発生し、人を刺す被害を生じさせることがあります。このような被害のほとんどは、シバンムシアリガタバチによるもので、時にクロアリガタバチによる場合もあります。ほかにノコギリヒラタムシに寄生するノコギリヒラタアリガタバチ、ヒメマルカツオブシムシに寄生するキアシアリガタバチなども知られていますが、これらによる被害は極めて少ないようです。
シバンムシアリガタバチは、体長1.5〜2.0mmで細長く、赤褐色の微小な昆虫です。雌は無翅、雄は有翅のものと無翅のものがいます。タバコシバンムシやジンサンシバンムシの幼虫に寄生します。春から秋にかけて活動し、雌成虫で越冬します。卵から成虫になるまでの生育期間は25℃で約25日、30℃で約18日で、年に4〜5回発生します。
クロアリガタバチは、体長は2〜3.5mmで、黒色で光沢があり、雌は無翅、雄は普通では翅を有します。クシヒゲシバンムシ、マツザイシバンムシ、ケブカシバンムシ、チビタケナガシンクイ、タケトラカミキリなどの幼虫に寄生します。6〜7月に被害が多く見られ、年1世代の発生と言われていますが(安富・梅谷、1995)、飼育条件下での生育期間はシバンムシアリガタバチと大きな差が無く、繰り返し発生する可能性もあります。
非常に小さな虫なので、生きている虫を確認するのは困難ですが、刺される被害があった部屋の照明器のカバーの中や窓のサッシのレールなどを探すと、直径0.3〜1.0mmのリング状に丸まったアリガタバチの死骸を発見することができます。またライトトラップを設置しておくと捕獲されることがあります。
タバコシバンムシは、長期間保管された乾麺類、小麦粉などの貯蔵食品から発生するほか、一般の家屋では畳や合板から発生すると大量発生になります。そういう場合にはシバンムシアリガタバチも多数発生する可能性が高まります。シバンムシ類の発生源を見つけだし、シバンムシ類を駆除します。また木材害虫の他のシバンムシ類、チビタケナガシンクイ、カミキリムシ類などの幼虫からも発生しますから、その場合には奇主となるその害虫を駆除します。
シバンムシアリガタバチは壁や天井などをすばやく歩行し、時にはテーブルなどに落下してくることもあり、虫を見つけたら確実に殺虫します。ピンノズル付きのエアゾールを小さな穴や隙間に噴射するとともに、照明器具周辺の壁や天井面、窓のサッシなどにも吹き付けておくと、そこを歩行した際に薬剤に触れて死亡します。さらに室内を密閉して市販の燻煙剤や全量噴射型エアゾールを室内に充満させます。
室内のアリガタバチ成虫が全滅したとしても、シバンムシの発生がおさまらなければ、また発生しますから、シバンムシを防除することが基本となります。