ヒメマキムシ類、ハネカクシ類、ケシキスイ類など、各種の甲虫類がカビそのものやカビの生えた食品などから発生します。これらは知らぬ間に突然大発生して不快視されるほか、食品、医薬品、製紙など各種製造工場などでは混入異物となる恐れもあり、注意が必要な昆虫です。
ヒメマキムシ類(ヒメマキムシ科)は全世界で約700種、国内では約30種が記録されています。家屋害虫としてはスジタカヒメマキムシほか複数の種類が知られており、いずれも体長1〜2mmの褐色の微小種です。冷蔵庫の裏や空調設備の周辺、結露が生じやすい場所の木質部などが発生源になります。工場などでは、木製のパレットが発生源となって屋内で繁殖したり、他の施設に虫が持ち込まれたりすることがあります。
ハネカクシ類は甲虫の仲間ですが、小さな前翅の下に後翅が折りたたんであり、一見ハサミムシのような形をしています。日本には約800種が分布していますが、 ヒゲブトハネカクシ類(Aleochara属)などの微小種がカビや腐った有機物が溜まった汚泥などから発生します。また、カビが生じた食品や発酵した穀類からコガシラハネカクシ類が発生し、有機物のほか、他の昆虫も捕食します。
その他の甲虫類では、テントウダマシ科のコマルガタテントウダマシが家屋の床裏のカビに大発生することがあります。またケシキスイ類のクリヤケシキスイ、コメノケシキスイなど複数の種類が、吸湿してカビが生えた穀粉や、発酵した食品などから発生します。コキノコムシ科のフタオビヒメコキノコムシ、チャイロコキノコムシ、ホソヒラタムシ科のフタトゲホソヒラタムシなども、同様なところから発生します。また、畜鶏舎や屋外に廃棄された穀類から発生したものが家屋の照明に飛来することもあります。
発生源であるカビを生やさないこと、カビまたはカビの生えた食品などを除去することが基本です。
結露しやすい場所、高湿度で木部や食品残渣がある場所から発生しますので、なるべく換気を良くします。閉鎖された狭い環境では、除湿剤や除湿機を設置するとカビも虫の発生も抑えられます。コンクリートの割れ目などから室内に侵入して来る場合には、コーキンング剤で隙間を塞ぎます。排水溝の周辺や水周りに腐った有機物の汚泥が溜まっていると、ハネカクシ類の発生源になりますから、よく掃除し、排水管などは洗浄します。カビが既に発生している所は殺カビ剤等を処理した後、残効性のある防カビ剤を処理します。
発生源の周辺や虫が徘徊する場所には殺虫剤エアゾールを吹き付けておきます。剥発生場所が特定できないような場合には、市販の燻煙剤や全量噴射式エアゾールを処理し、部屋を密閉した状態で暫く暴露しておきます。
ライトトラップや粘着トラップを配置して、日頃から捕獲状況を観察しておくと、異常発生に早く気づくことができます。