衣類などの繊維製品を加害する主な害虫としては、甲虫のカツオブシムシ類とガの仲間のイガ類がありますが、ここではカツオブシムシ類について取り上げます。カツオブシムシ類は、ヒメカツオブシムシとヒメマルカツオブシムシの2種が主な害虫です。
これらの幼虫は動物性繊維の主成分であるケラチンを消化できるため、毛織物、絹織物などの動物繊維、羽毛、皮革などを好んで摂食します。また、ナイロンなどの化学繊維や綿なども、汗や食品などで汚染された箇所を食害します。たとえ摂食量が僅かであっても、装飾品や衣料品の品質に与える影響は非常に大きなものとなります。
カツオブシムシ類はイガ類と異なり、幼虫期間が非常に長く、年に1回、春に成虫が羽化します。1匹当たりの衣類の食害はイガ類よりも遥かに多くなります。幼虫は餌を求めてよく徘徊し、床やカーペットの下などに溜まった乾いた食品屑を食べ歩き、そのうちにタンスなどにも侵入します。餌となる洋服が入った箱の中で、羽化した成虫は餌をとらずに交尾・産卵を行いますが、2週間ほどすると光に引かれて野外に飛び出し、菊の花などに集まって蜜をなめます。花の蜜に集まった成虫は、寿命が延び、さらに産卵することができます。
洗濯物を取り込む際には、虫が付着していないかをよく確かめます。特に近くに鳥の巣がある家や、春に白い花に沢山小さな甲虫が見られる場所では要注意です。衣類害虫の卵は比較的落下しやすいので、よく払うようにし、ブラッシングもまめに行います。ドライクリーニングやアイロンも効果があります。
カツオブシムシ類の幼虫は物陰をよく徘徊し、乾燥した食品屑なども食べますので、室内を掃除機などでよく清掃することが大事です。
カツオブシムシ類などの衣類害虫は汚れが付着した衣類を好むので、汚れた衣類はなるべく早く洗濯し、もし虫が発生している衣類が見つかったならば、隔離して速やかに廃棄処分します。
タンスや押入れの中に蒸散性の家庭用衣類防虫剤や防虫シートを敷くことによって、母虫の侵入や産卵、幼虫の食害を予防することができます。ただし、発育の進んだカツオブシムシ類の幼虫は殺虫剤に対して強いので、防虫剤は初春から使用し、春〜初夏の小さな幼虫を確実に防除するようにします。
カツオブシムシ類の成虫は3月頃から室内に出現しますから、見かけたらすぐにつぶすか、不快害虫用のエアゾールを噴霧して殺虫します。羽化後半月ほど過ぎると、光への誘引性が高まるため、ライトトラップに捕獲されます。このような成虫は産卵能力がまだありますので、多少は防除効果があります。また食品などを扱っている場所では、異物混入による被害も生じますから、ライトトラップによる成虫の早期捕獲は有効です。ただし電撃殺虫器は、虫の死骸が受け皿に溜まり、そこがカツオブシムシ類などの衣類害虫の発生源になることがありますから、受け皿の点検や清掃をまめに行う必要があります。