どんな虫にお困りですか?

害虫の特徴と防除

テントウムシ

特 長

 テントウムシ科は、世界に約4500種が知られ、日本には約200種ほどが分布しています。体形が半球形で、触角が短く、背中に斑紋をもつ種類が多くあります。農作物や園芸植物の害虫であるアブラムシ類、カイガラムシ類、ハダニ類などのを捕食する天敵であり、テントウムシは生きた農薬とも言われています。また植物の病気であるウドンコ病の菌を食べる種類もあり、人にとっては極めて有用な昆虫のグループです。野外で生活している他の多くの種類も生態系の多様性を構成する大切な「ただの虫」の一員であることは、忘れてはならないことです。
 家屋害虫としてのテントウムシ類の被害は、カメムシ類のように、越冬の際に多数の成虫が集合し、大群となって家屋に飛来することです。益虫もこの時ばかりは、人にとって不快害虫として扱われてしまいます。最も普通種のナミテントウがこのような習性を持っており、大型のカメノコテントウもそれらに混じって見られます。数千匹の大群が飛来することもあり、その異常事態に遭遇した人は不気味さや恐怖心さえ覚えます。またテントウムシ特有の異臭を不快に感じる人も多いようです。最も厄介なのは、黄色や真赤な液を脚関節から出し、これが衣類などに付着すると染みとなって、洗っても落ちないことです。
 このような異臭や染みを経験すると、集団飛来する習性のない全くの益虫であるナナホシテントウでさえも害虫と勘違いしてしまう人がいます。人が不快害虫を生み出している例と言えます。
 野外で見られるテントウムシのほとんどは「益虫」か「ただの虫」です。しかしごく僅かですが、植物を食べる種類もあります。ニジュウヤホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウは、餌植物がたまたまナス科植物であったことから、ジャガイモ、ナス、トマトなどのナス科作物を食べる害虫となっています。また近年、海外から侵入したインゲンテントウは、インゲン豆の葉を食べる害虫です。自然界の植物を食べていれば「ただの虫」ですが、園芸植物を食べた時点で「害虫」となってしまいます。

防 除

 ナミテントウは、晩秋に日当たりの良い建物の外壁面に次々に飛来し、窓の隙間や換気扇口、給排気口などから屋内に侵入してきます。したがって、忌避性に優れたカメムシ用エアゾールを、外壁の表面全体には薄く噴霧し、アルミサッシの枠などの窓周辺部や換気扇口などには重点的に吹き付けて薬剤を塗布すると効果的です。また窓ガラスにはガラス防虫忌避スプレーを噴霧しておくとさらに効果的です。このように、屋内に入る前の虫に対しては、殺虫よりも忌避効果をねらって処理します。秋口に家屋周辺の樹木の幹にむしろを巻いておき、翌春になったら取り外して捨てます。屋内に侵入したナミテントウやカメノコテントウは低温時には物陰の隙間に潜んでいますが、暖房などで室温が上がる度に活動を始め、窓ガラスや天井や壁を徘徊します。天井近くを徘徊する虫に直接噴霧するときには噴射力の強いエアゾールが適しています。
 個体数が多い場合には、市販の燻煙剤または全量噴射型エアゾールを室内に充満させた後、暫く室内を密閉しておくと、天井裏や隙間に潜んでいた虫が飛び出してきて床上に落下仰天します。これらには、完全に死んでいないものが多く含まれていますので、箒や掃除機で除去します。晩秋に成虫の集団飛来があった建物では、初春にも同様な事態が生じますので、簡易的に処理できるエアゾールなどはあらかじめ備えておく必要があります。
 ジャガイモやナスなどのナス科作物などを加害するオオニジュウヤホシテントウなどの植食性テントウムシには、市販の園芸用殺虫剤(農薬)を散布します。